「1 創業の動機」の書き方

よくある誤解

「動機」と言われると、社会貢献や社会的な問題解決のためとか、崇高なことを書くようなイメージを持ってしまうのですが、どうなのでしょうか?

 

社会貢献の理念を書いても意味はありません。

 

融資の担当者は、理念の素晴らしさではなく、「ビジネスが軌道に乗り、キチンと返済がなされるか」を見極めようとしています。

 

 

「理念」を書くのではなく、「起業に向けて綿密な準備を重ねていたところ、事業を成功させられる諸条件が整ったため、起業するのは今しかないと考えたというストーリーを組み立ててみてください。

 

具体的な書き方は、下記で説明します。

具体的な書き方

以下のルールに、ご自身の状況を当てはめてみると良いでしょう。

 

1 起業に向けて、会社に勤めながら、スキル・経験を積んできた
 
2 同時に、起業セミナーにも通い、経営マネジメントも身に着けた。
 
3 経験を積む中で、同業他社と差別化できるサービス・商品を考え出した。
 
4 新しく考え出したサービスや商品について、周囲に話したところ、是非、利用・購入したいという声を頂き、既に予約ないし契約をしている人もいる
 
5 そこで、機が熟したと判断し、起業に踏み切った。

添削例1(飲食店)

 

1 これまで飲食店(中華・4店舗)で、調理からホールまで一通り経験した。

 

2 また、5年前から独立を目指して飲食店経営について勉強していた。

 

3 直近では中華店で3年間店長を務め、マネジメント業務を実際に経験した。

 

4 今回、札幌駅近くに最適な物件を確保できたので、肉料理に特徴のある中華店を開業する。

 

 

起業しようとしている業種と同じ業種の経験が豊富であることが伝わってきます。

 

また、店長を経験しているのでマネジメント能力があることがアピール出来ています。

 

「肉料理に特徴」⇒興味を引く⇒そこで、この料理の内容を写真付きで別紙で説明すると良いでしょう!


添削例2(製造業)

 

1 家電メーカーの株式会社△△にエンジニアとして10年間勤務した。将来、独立することも念頭に置いていた。

 

2 勤務時代に培った技術を生かして、従来品にはなかった新方式の○○の製造に成功した。

 

3 営業担当者2名とエンジニア2名を確保、高品質の製造が可能な外注先も確保できている。

 

4 既に、大企業3社と取引できる確約も取れており、今回起業することを決意した。

 

 

 

「従来品にはなかった新方式」⇒興味を引く⇒写真付きで別紙で説明すると良いでしょう!

 

経営に必要な人材と外注先が確保できている⇒生産体制が整っていることがアピールできています。

 

大企業3社と取引できる確約あり⇒契約書等を添付できればし、既に顧客を確保できていることをアピールできます。


添削例3(エステサロン)

 

1 エステサロンに10年間勤務し施術の技術を磨く。

 

2 同時に、お客さんをリピーターにする方法を研究し、実践してきた。

 

3 その結果、現在の勤務先で、約100名のお客様からご指名されるようになった。

 

4 ご指名を頂けるようになってきたころから、独立を考えていたところ、「お店が出来たら通います」というお客様を60名以上確保できたため、開業を決意した。

 

 

融資の担当者は、「お客様をリピーターにする方法」 「100名の指名客を確保できた理由」が何かが気になるはずです。そこで、その方法を別紙で詳しく説明する必要があります。

 

100名、60名という具体的な数字を出しているところが良いです。数字を出すと説得力があります。


添削例4(学習塾)

 

1 大学の4年間で、家庭教師のアルバイトを続けているうちに、将来、学習塾で起業したいと思った。

 

2 起業した後の資金繰りについて学んでおいた方が良いという考えから、卒業後、6年間、信用金庫に勤務、主に法人営業を担当した。

 

3 就職後も、起業する決意に変わりはなく、取引先の社長から事業経営についての話を伺ったり、地元の商工会議所の起業セミナーに参加し経営者としてのマインドを養う。

 

 

 

法人営業で業界の厳しさを知っており、融資担当者に起業の覚悟があることが伝わるでしょう。
社長から経営について学び、起業セミナーに通っていることから、経営者としてのマネジメント能力があると評価してもらえるでしょう。


創業の動機の書き方のまとめ〜5つのポイント

 

以上、創業の動機の書き方について述べてきましたが、まとめると次の5つのポイントに集約されます。

 

1 ビジネスプランの概略が読み取れること

 「動機の動機」は創業計画書の初っ端であり、読み手は、何のビジネスをするかを全く知らない状態で読み始めます。そこで、起業するビジネスモデルをイメージできるように書く必要があります。  

 

2 経験を生かせるビジネスであること

 創業に向けて、長年の経験を積んで起業したというストーリーがあれば、起業への決意が伝わります。
 逆に、経験も乏しく、準備も1〜2年程度だと覚悟や熱意があるのか融資担当者は不安になります。

 

3 新規性や独自性があること

 競合他社との差別化が図られなければ、生き残ることは難しいからです。

 

4 顧客確保のめどがついていること

融資担当者は一番重視するポイントです。顧客確保のめどがついていれば、キチンと返済してくれると予想できるからです。

 

5 起業の準備に取り組んだこと

 自分で責任を持ち、判断する経営者は、上司にお膳立てされ給料を約束されたサラリーマンとは別世界で生きることになります。
 
 そのマインドセットができているかのかを融資担当者は気にしています。
 
 起業セミナーに通った、人脈作りに励んだ、独自の仕入れルートを確保することに努めたという客観的事実があれば、融資担当者も経営者としてのマインドセットができていると評価してくれます。